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農業と介護から見る
次世代の事業のカタチ
日笠工業株式会社
代表取締役
日笠 正統
香川県で栽培、収穫、農作業受託、農地管理を展開。持続可能な企業農業を目指し、2022年に下田工業と資本業務提携。
https://www.hikasakougyou.com/
下田工業株式会社 取締役 新事業統括
株式会社笑笑音(ええね) 代表取締役
水野 広文
新事業統括として新たなソリューション事業の開発をリード。株式会社笑笑音の代表として愛知県瀬戸市でデイサービスを3店舗運営。
http://xn--r8ja5i.com/
どんな事業を展開しているのか?
笑笑音は、愛知県瀬戸市でリハビリ特化自立支援デイサービスを3店舗運営しています。「明日の笑顔を笑いの音が絶えないこの施設で作りましょう」というコンセプトで、要支援・要介護、すべての方にマッチした自立支援メニューを提供しています。
水野
日笠
日笠工業も紹介させていただくと、香川県さぬき市で農業事業を展開しています。広大な面積で作物を生産する土地利用型の農業で、最新鋭の機械を導入し、米・麦・飼料作物・WCS(ホールクロップサイレージ・稲発酵粗飼料)の4品種の生産を行っています。
もともとは建設関係の事業をされていたそうですね。
水野
日笠
はい。兼業農家を営んでいた両親に育てられたこともあり「いつか農業をやってみたい」という思いがあり、近所の方から2012年に農地を7ヘクタール借入できたことで思い切って農業に転換しました。一般企業の農業参入は香川では初の試みでした。そこからたくさんの障壁がありましたが、廃業される農家の農地を受け入れて、今では150ヘクタール以上という県内最大の農地面積を有しています。
素晴らしいですね。
水野
日笠
ありがとうございます。笑笑音さんも同じくらいの時期に事業を始めたと伺っています。
2015年の旧東海電気時代(現・下田工業 名古屋支社)に、新事業として「笑笑音」をスタートさせました。名古屋で長い間商売をしてきて地域に恩返ししようと介護事業に進出しました。理学療法専門の大学の先生を顧問に招き、指導していただきながら9年間でデイサービスを3店舗つくり、瀬戸市内の他施設が見学に来るほどサービスのレベルや知名度は上がっています。
水野
日笠
ゼロから異なる分野に進出して成功されているのは素晴らしいと思います。
なぜ下田工業と手を組んだのか?
日笠
11年間でこれだけ農地を拡大できたということは、農家は経営が厳しく、辞められる方が多いということ。企業農業を持続していくためには、経営体制の強化が不可欠でした。そこでご紹介いただいたのが下田工業さんでした。100年間時代の変化に合わせて成長し続けてきたその経営手腕がまず魅力的で、下田社長ならびにみなさまとじっくりお話させていただき、下田工業さんとなら一緒にやっていけると確信しました。
私も以前の会社で堆肥の事業を行い農家の実態を見てきましたが、高齢化は深刻な問題ですよね。小さな農地で農業をやっていても利益が出ず、広い農地を一気に確保して大規模農業をやっていかないと立ち行かないなと思いました。
水野
日笠
そうですね。農地は拡大し続けたいと思っています。ただこればかりは相手ありきの話で、地域の信頼がないと難しいのですが。笑笑音さんの今後の計画はありますか?
現在、有料老人ホームの計画を進めています。介護事業は高齢者が増加する2030年までは成長が期待できますが、以降は減少に転じるため、介護事業領域を全方位に展開すると同時に、どう商社らしく多角化していくかがポイントです。たとえば、利用者の健康状態を捉えるバイタルセンシング機器を実践の中で開発していくなど、本業と相乗効果のある取り組みを行っていきたいと思います。
水野
農業×介護が可能にする未来とは?
介護、農業、下田工業の相乗効果を出すには、6次産業化へのチャレンジが考えられます。病気のリスクを減らすには口腔環境、腸内環境を整えることが必要で、日笠工業さんで作った農産物を下田工業の取引先で加工して、介護食やサプリメントで使用するというフローができると有意義だと考えています。
水野
日笠
そういうアイデアは非常にありがたいですね。
一例として、日笠工業さんで腸内環境に良いとされる大麦を生産し、それを下田工業の取引先である製菓メーカーでシリアルやお菓子に加工します。このお菓子に我々の方で実証中の食品添加物を加えることで、口腔環境や腸内環境を改善できる食材を開発できるかもしれません。また、健康寿命の延長に貢献できるサプリメントや薬膳食の開発も検討したいところです。
水野
日笠
グループとして依頼があれば我々の方で作る技術があり、協力することができます。新しいものを生み出せて、それで食べる人が健康になるなら、こんなにいいことはないですね。その他の例としては、バイオプラスチックなども下田工業さんの事業と相乗効果があると思います。
おっしゃる通りですね。
水野
持続的に成長していくために。
日笠
農業も介護も「高齢化」を背景にした社会的課題を解決していこうという視点は共有していて、そのためには持続可能な企業であることが重要です。農業従事者は65歳以上が8割と言われていて10年後には多数がリタイヤしてしまいます。農業は若い人にも魅力的な産業になっていかなければなりません。下田工業さんからアドバイスをいただいて働き方を改善し、働きやすい職場づくりを進めており、昨年度より時短勤務等の制度導入を進めています。
介護も成り手がいないことが深刻な課題です。離職者が出る一番の理由は人間関係なので、人間関係に目配りして人を動かすようにしています。あとは収入面で安心感を持ってもらえるように、下田工業が母体であることを活かして右肩上がりの給与体系にしています。
水野
日笠
我々も社員が安心して少しでも長く勤められるよう、1年ごとの昇給を取り入れた給与体系にしていています。
介護業界で盛んなのが人材紹介です。これを他の介護事業者とのネットワークを活かして、自分たちの中で回していけないかと検討しています。介護機器や健康食品もそうですが、介護の周辺でビジネスを拡大していくこと。最初の「ペンギン」になれるかどうかが、商社マンの腕の見せ所ですね。
水野
日笠
我々も全国で農業経営者とのコミュニティーをつくり、生産者をグループ化したいと考えています。若者にも魅力ある企業農業のノウハウを確立し、我々が培ってきた生産技術を含めて全国に広めていくことで、食料自給率の向上や耕作放棄の抑制をしていきたい。そして地域の活性化に貢献し、農業を次世代につなげていきたいと思います。
ぜひ期待しています。本日は実りあるお話ありがとうございました。
水野